Secret mode〜後輩くんの見てはいけないトコロを見てしまいました〜











結論から言うと、亜貴くんのご両親は、本当に天使か女神に会ったくらいの大歓迎をしてくれた。


「ね、言ったでしょう」

「い、言われたけど。……とにかく、ほっとした」


緊張と想定していなかった展開にパニックになる寸前、「いいかげん、二人きりにして」と亜貴くんが救出してくれて、広いリビングから彼の部屋へと移動して今に至る。


(到着した瞬間から既に、お屋敷を前に逃げ出したくなったもんね。……捕まったけど)


彼のお兄さんに、あれだけ啖呵を切ったこともある。
話は何かしら聞いてるだろうし、何よりせっかくのお誘いを断るのは良くないと思ったんだけど。


「反対なんてされないって。寧ろ、俺を貰ってくれてありがとうの会だよ」

「なに、その会。……私だって、亜貴くんと付き合えてよかったよ。まさか、こんなことになるとは」

「つれないな。俺は最初から本気だったよ。自分で認めてなかったけど、誰かが気になって目で追うなんて子どもの頃以来だったし。……兄貴に抗いたいって思ったのは初めて」


少し狡い言い方がくすぐったい。
ベッドに先に腰を下ろすと、亜貴くんは脚の間に私を座らせてそっと髪を梳いた。


「……ここに、誰かを連れてくるなんてね。依花さんが俺を好きになってくれなかったら、あり得なかった」

「そんなことないと思うけど、なくてよかった」


緊張が一気に緩んだからか、余計に触れられるのが心地いい。
ふと笑った吐息が聞こえたということは、私の目は自覚以上にとろんとしているらしい。


(……甘い……)


言葉遣いは、苦手だった桐野 亜貴の頃とほぼ変わらないのに。
日々、甘くて優しいの度合いを更新していく。
私が大好きな人の、私を好きでいてくれるのが伝わる声、言葉、指先の触れ方。
その全部が心地よくて、身を委ねたくなる。
こんな私でも、甘えていたくなる。


「あ、さっきは言わなかったけどさ。もし、商品化とか相談したいことあるなら適任……なーに、気持ちい……? 」

「そりゃそう……」


亜貴くんの腕のなか、頭は彼の胸に預けているし、まだそうして、頭を撫でてくれている。


「そりゃそうなの。いいよ、寝てても。うちの両親の相手、大変だったでしょう。これからも、依花さんにどうにか俺を貰ってもらおうとするだろうからさ。少し休んでて」


この状態を見たら、そんな画策も不要だと分かってもらえるだろうけど。


(そういえば、さっき亜貴くん、何か言いかけたような)


「……もっと、亜貴くんの部屋見たいのに……」


本気で睡魔に襲われそうな私に笑って、抵抗力を奪うように頰を指の背で撫でる。


「面白いものは何もないよ。それに、またいつでも来れるから。というか、来る羽目になると思う。だから、今は俺のこと堪能して? 」


何という誘惑。
そんなの、抵抗できるわけない。


(……本当に、こんな日がくるなんて)


誰かに抱っこされて、ドキドキしながら同時に安心できる。
そんな幸せな感覚を、私が味わえる日がくるなんて思ってもなかった。


「俺も今、すごく幸せに浸ってる。誰かを抱いて幸せだなって思う自分にめちゃくちゃ驚いてて……幸せ」


ねぇ今、同じこと考えてたよ。
そう伝えたくて顔を上げたのに、「目覚めたなら、キスするけど」と瞼に口づけられる。
ここでもやっぱり、気を遣ってそんなキスをくれるのは亜貴くんで、もっとを強請るのは私の方。


「せっかく堪えたのに。いいの? ……寝ていいよって言ったの、取り消すよ」

「……起きた……」


(……欲張りになったな、私)


幸せだと思った次には、もっとが欲しくなる。
でも、きっと亜貴くんとなら。


「じゃあ、我慢やめ」


耳の輪郭を辿ると同時に顎を上向かされ、反射的に目が閉じかけた時――……。


「驚いたな。本当に続いてるのか」


――ノックもなしに、桐野・兄が乗り込んできた。