ひとつ外しては一度確認するように目を見つめられるのは、人生で一番恥ずかしい。
照れ隠しにもならないことを言う私に、亜貴くんは困ったように――いや、困ったんだと思う。
「……それ、一分かからずに、今からどんどん更新してくと思うんだけど」
そんなことでフリーズしてくれる亜貴くんが好きだ。
そう言うと、今度はわりとはっきり溜息を吐かれてしまった。
「……き、着るのは着たんだけどね。やっぱり、自分では外せないみたいでして……」
「安心して。そんなことさせないし、何なら今度は留めてあげる。だから、恥ずかしいならちょっと黙って……」
羞恥心が、人をおしゃべりにするのはなぜだろう。
「俺まで恥ずかしくなる」と文句を言われたけど、これでも一応堪えた方だ。
キスで塞がれなかったら、ホック部分を前にしてどうにか留めたんだと要らない報告をするところだった。
「……でも、ありがとう。厳密には俺の為じゃないかもしれないけど、俺は俺の為に頑張ってくれたんだって解釈する」
「……ん……」
それも、間違いじゃない。
それだけではないけど、もう一つの答えであり事実だ。
胸元に口づけられて零れた声も同意だと解釈したと、クスッと笑われたけれど。
それもまた、正解だから。
・・・
亜貴くんはなかなか私の手や腕に触れてくれなかったから、かなり早い段階で私の方がくっついてないと寂しくなる有様だった。
「意地悪じゃない。痛くないか怖いんだよ。……平気? 」
不満だと告げると、苦笑してそっと腕を撫でられたけど、そんなことで痛くなるわけない。
ベッドで緊張してたのが嘘みたいに、確かに一分と待たずにより恥ずかしくなるけれど、他の感情も入り混じってそれどころではなかった。
「っ、は……なに、寂しい? 本当可愛い……。まじ、依花さんの歴代の男、修行僧か何か? この状況で、よく止めれたな。ある意味、尊敬する」
「……いや、あの時は学生だったりしたけど、今はもっと一般的な職業だと思うけど。あんな発言するお坊さんなんて嫌……っん……」
そういうことじゃないと、真上から唇を塞がれてまた、私が亜貴くんに触れる。
「大体、そんな歴代なんて言えるほどいないから。わ、分かってるくせに」
「うーん……? ま、何にしても気分はいいよ。誘惑に強くて感心するし、もしかして、そもそもこの顔は俺しか見てないのかもって思うとさ」
亜貴くんの、自分の腕に触れた指先を見る時間が結構長くて恥ずかしい。
でも、どんなに恥ずかしくても、離す気にはならなかった。
「……見てないよ、誰も」
「どうかな。どっちにしても、もう他の誰にも見せないでね。……依花さんには、俺がいるんだから」
「……うん」
「他にいないよ」を飲み込むと、亜貴くんは満足げに頰を撫でた後、恐る恐る動きの悪い方の手指に絡ませてくる。
「その為にできることは惜しまないから。たとえ相手が兄貴でも、絶対渡さない。依花さんにとって最高の彼氏になるからさ、俺のことだけ見ててよ。ね……? 」
「もうなってる……っ……」
それは事実で、亜貴くんの欲しい言葉だったと思うのに、そうやって触れられて口づけられたら途切れてしまう。
亜貴くんは、最高の彼氏だ。
何だか今は、ちょっとだけわんこの耳部分だけ見える気もするけど、そのうちまた脱ぎ捨てて男の人になるんだろう。
「……ね、依花さん」
「ん……? 」
――こんなふうに。
耳元で、「だーめ」と囁かれ、何がダメなのかも分からないまま、ピクンと身体が跳ねる。
「……目、開けててほしい……」
――これ以上、彼の瞳を見てたら変になる。
その予感はあったけど、羞恥よりも熱っぽい目を見ていたい誘惑に負けて頷くと。
もう何度目かの「愛してる」を、優しくくれた。



