9月、桜じゃなくてイチョウがたくさん並ぶこの季節。
私、涼風季衣にとって人生2度目の中学の入学式があるんだ。
新しい学校、心はウキウキモード──


「はあ……っ、ここ、どこ……!?」

……のはすが、ずっと走ってたから心臓バクバク!
こんな道、ママと学園に向かったときには通らなかったのに……。
電車に乗って、人に流されるまま駅の中をぐるぐるしてたら、あっという間に大きな交差点に出てしまった。
どう考えても学園の道じゃない……!
転校初日だっていうのに、すでに遅刻ギリギリなんてどうしよう!
ううう、前もって家を出たはずなのに、やっぱり時間がかかっちゃった。
……こんな格好、ママが見たらびっくりして倒れちゃうかもしれない。
いつもよりも長い前髪が、何度か目に入りそうでかゆい。

『さあキミも! 星煌(せいこう)学園においでよ』

たくさんの音に混って聞こえた、透き通るような声。
交差点には高いビルがあって、大きな広告が流れていた。

「あれ、星煌学園って今日から通う中学校だ……」

前の中学ではいろいろあって、新しい中学で2年生をやり直すことになったんだ。


「きゃー! Kis/metだよ、さいっこうに顔が天才!」
「あれで一般人とかあり得ないよね! もう芸能人だよ!」


なんでも、あの中学にはアイドルみたいな男の子たちが4人いるみたい。
今でも広告に出てくるぐらいだ。


「それに、この中学の制服ってすごい可愛いって噂だよね」
「わかるー! 私も行きたかったけど、お金持ちしか通えないんでしょ?」


……そう、らしい。
昨日まで私がどこの中学に行くかは聞かされていなかった。
何度聞いてもママは「ひ・み・つ♡」と言って教えてくれなかった。
でも制服を見て納得した。たしかにこの中学の制服はとーってもかわいい。でもね。


「たしかここって、女子はスカートじゃなくてもよかったんだよね?」
「そうそう、スラックス選んでもいいらしいよ~」


私が今日着ているのは、スカートじゃなくてスラックス。
それに髪の毛も、真っ黒で男の子みたいに短いウィッグ。
どこからどう見ても、


「あ! 噂をすれば、あの制服って星煌学園の子じゃない?」
「制服かわいい~ってかあの男の子、ちっちゃくてかわいくいない?」


……私は、男の子に見えてくれているらしい。
私のママはデザイナーで、とにかくかわいいものがだいすきだった。