いつもなら、直ぐに楓が飛んできてくれるのに。真っ先に助けに来てくれるのに。


――楓。楓!


「――っ……」


波樹の苦しそうな声が頭上から降ってくる。

氷沙は波樹の胸元を掴んでいた手に力を込めた。


「――なっちゃん!あたしのことならおいといていいから、動いて!」