あの魔のような暗闇のときを世論は『暗黒の1週間』と名づけ、興味本位の特集を何度もテレビで組んでいたが、その原因の解明はされていない。したり顔の知識人が、あれは一種の集団ヒステリーだと唱えていた。
だが、実際にそれをこの街で体験した人間は、あれはそんなものではなかったと言う。あれは人知を超えた何かだった、と。

とにかく、何か大きな恐ろしいことがこの街に降りかかったことだけは間違いなかった。
そしてそれによって、消されてしまった命があって、この街の、自分たちの高校の有名人が姿を消したのだ。
騒ぐ理由としては、十分すぎた。

それからしばらくして、街の重鎮であった雨宮神社の住職、雨宮水上が逮捕された。

理由は良く分からなかった。収賄、詐欺。そんな言葉が踊る地方新聞を読みながら、高原はただ、波樹を思った。

雨宮波樹は、あの日から一度も学校へは着てはいなかった。