幽霊に身体をのっとられて、犯罪者にされそう―――


 高原の話を要約すると、確かにそうなる。波樹の言うとおり、なかなか信じがたい話で、氷沙が菩薩のような笑顔で「信じるよ」というほうが普通なら異様だ。どちらかといえば、その方がより哀れまれて馬鹿にされているようにとられかねない。

 が、氷沙にとっては――、そして実のところ波樹にとっても、高原の話す事象は信じがたいことではない。


 日頃それほど親しくない高原が、犯罪者にされそうだなんて深刻な話を雨宮姉弟に持ち込んだ理由もそこに隠れている。

 今この不可思議な相談を聞いている場所は、氷沙と波樹の実家。そして、いくらか都心からは離れているというものの、東京にたっているとは思えない古びた神社、雨宮神社の一室だ。