** 「……なんなんだよ、いったい…」 波樹には、玄関の扉越しに見えた、景色に唯、そう呟くことしかできなかった。 まだ、真昼間だというのに、外は夜の帳が下りたかのような暗闇の最中だった。 「ありえねぇよ、こんなの」 かすかに聞こえるのは、人々の悲鳴なのか。 こんな、町は知らない。 昨日までは、いつもの、風景だったはずなのに。