「……それでも、波樹、いつかはお前が駒を操る立場に立てるのだから、もっと強い心を持て。

氷沙に、何かあれば、それは楓の失態だろう?仮にも『天野』の大事な跡取りの、ね。そこからも、天野に付け入っていくことは可能だ。

おまえが、この雨宮の頂点に立つころには、天野は消えているだろう」



水上が淡々と、告げて寄越す台詞は、どれも現実味をかいているのに、波樹の胸に鋭く刺さった。


そんな、夢のような野望を語る祖父が怖かった。

人を傷つけることを平然とした顔で言う祖父が、せめて何かに取り付かれていてくれたのなら、良かったのに。