ほら!といいながらも、氷沙は掴んでいた黒髪をそのままに波樹の頭をわしづかみにすると、額が畳に付くのではないかと言うぐらいに、押し付けた。


「いや………別にいいよ。波樹が疑ってかかるのも最もだし。雨宮(あまみや)さん気にしないで」


「マジごめん!俺がデリカシーなかった!ほら、言っただろっ。なっ氷沙。もう離して」


「―――全く!なっちゃんいい加減にしなさいよ?絶対疑わない。信じるよ。高原くん。だって、誰も信じてくれないって思ったから私たちに相談に来てくれたんでしょう?」


「んなこと言っても、いきなり幽霊に身体をのっとられて、犯罪者にされそうなんだって話を信じろって方が無理だろ!?」


「なっちゃん!」


 懲りない双子の弟の頭をもう一度叩こうと思ったが、これ以上頭が軽くなったら大変だと考え直した氷沙は、ほっぺたを思いっきりつねりあげた。