桜の軽口めいた口調に、仲間が笑う。


コンビニ入ろやぁ。寒いわ。そう言いながら、先を歩いていく彼らの背と距離が出来たのを確認してから。

桜が降り仰いだのは、何故か赤く光って見える東の闇だ。


「……楓、大丈夫やろか」


思い浮かべたのは、自分たちから離れ、東京に居る、1つだけ年下の従兄弟の顔だった。

今でも一月に一度は顔を合わせているが、一緒に暮らしていた時期が小学生の頃だけだからか、自分の記憶の中の楓は、まだまだ幼く、ひ弱だった印象が強い。


――自分の力を上手く引き出すことが出来ず、周りの重圧にやられそうになっていた、小さな子ども。