杏樹は今日もいつもと変わらない日常を過ごしている。

 会社に来て自分の仕事をコツコツとこなして帰る。何らいつもと変わらない。
 真面目に自分のやることを一生懸命やりなさいと言われて育った彼女は、その教え通りに成長した。

 今年で社会人3年目だが、不器用ながらも一生懸命に仕事をする彼女はまさに真面目ちゃんそのものだった。
 彼女は未だに課内で一番下なので、周りの社員から言われたことをこなしていくしかない。
 時々、自分は雑用係なのかと思うような仕事を回されることもあるが、一番下だからと自分に言い聞かせている。

 仕事をするという点では正しい姿勢であることに間違いはないのだが、どこか人として面白みがない。
 決して愛嬌が無いという訳ではないが、出で立ちが最低限の薄化粧で、服装も地味なワンピースである。
 おまけに細めのフレームの眼鏡を掛けていて、おしゃれとは言い難い。むしろ華は無い。

 けれど、人柄も良く仕事も堅実なので最近やっと信頼され始めているような手ごたえを感じ、少し嬉しい杏樹なのである。