乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

「手札を握ってるのは晶でも立場はウィンウィンだ。自分を曲げられないと思ったら、堂々と叩き返しておいで。後はどうにでもしてみせる、心配いらないよ」

なんにも言ってないのに。漠然と感じてた緊張とか焦りを呆気なく弾き飛ばされる。思わず目を瞠ってから、あたしは泣きそうに歪んだ変顔で笑った。

「ユキちゃんて心も読めちゃうんだねぇ」

「相思相愛だからかしら?」

さらっと男言葉だったら、うっかり惚れちゃうとこだった。

「どれが正解か迷ったら、最後はトシヤ君の気持ちを大事にしなさいな。チヨちゃんとマコトちゃんが一番分かってるでしょうけど」

拭き上げたグラスをグラスホルダーに吊して、ユキちゃんがにっこり笑う。

「榊はガンコなくせに、妙なとこが往生際よすぎるんだもん。俺を助けろって、なんで言わないの?もっとワガママ言ったってお釣りがくるのに、言って欲しいのに、なんでもっと自分を買い被んないの・・・っ」

「そうねぇ、甘えベタね。・・・きっと今ごろ泣いてるわ、チヨちゃんに見えないところで。こんなところで終われない、諦めてたまるかって、口惜しくて泣いてるのよ」

瞼の裏に浮かんだ背中。殺風景なあの小部屋でひとり、布団かぶって肩を震わせる背中。

「チヨちゃんがしてあげたいのは、今ここで泣いてあげること?」