乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

亞莉栖は情報の売買とか、裏取引のカムフラージュに使われたり、まともに飲んでく客はほとんどいない。たまに秒で裏口から出てく輩も見かける。

でもあたしにとっては第二の哲っちゃん()みたいな場所で。甘えたり、慰められたり、励まされたり、叱られたり。ここが無かったら、ユキちゃんがいなかったら、たぶん違う臼井宮子になってた。

・・・全部わかってるから真は黙って連れてきてくれた。胸につかえてるモノを、あたしが吐き出して楽になれるように。

冷えたグラスビールに、ハムとチーズのホットサンドまで付いてきて、もそもそ食べきってから、お腹が空いてたことにやっと気付く。

「そう言えばお昼からなんにも食べてなかった」

「おかわりあるわよ」

今度は卵入り。おいしい。・・・だったら平気。ほんとに絶望したときは何を食べたって味がしないんだから。食べたいって本能が死ぬんだから。

「・・・あのねユキちゃん」

空のお皿を下げ、ロンググラスのジンフィズを置いてくれたユキちゃんに、真には聞かせられない本音を晒す。

「高津さんてさ、かなりこじらせてる人だけど、やっぱり憎めないんだよねぇ」

「・・・チヨちゃんに借りを返しに来たんですって?」

「あのひとが恩に着ることじゃないのに、千也さんのことすごく大事だったのかな・・・」

「真と宮子お嬢が同じ鏡で見ても、違う晶が映るのは当たり前だからね。そう思う自分の目を信じるのは間違いじゃないんだよ」

男口調で淡く微笑んだユキちゃん。