ひっそり暮れた薄闇にまぎれて廃倉庫をあとに、ニ列目シートで真の肩に寄りかかったあたしは、指だけ繋いで無口だった。
昨日から色んなことがありすぎて、両足が泥沼にめり込んでる。重たい、進まない。踏ん張らなきゃ、ひとりで。真の両手はもう塞がってる。
出来ることを考え続ける。もがく。止まったら沈む。動いてよ、足。
時折り運転手の西沢さんに仕事の指示を出しながら、真はあたしに無理に話しかけることもなかった。行きも帰りも時間の感覚が曖昧で、長かったのかそうでもなかったのか、着いたと思ったら亞莉栖の前だった。
「あら。チヨちゃん久しぶり」
カウンターの向こうから、相変わらず見た目は清涼系お兄のユキちゃんが、ニッコリ微笑んで迎えてくれる。
「ユキ姉、オレはまた後で来るからさ」
「じゃあオンナ同士で楽しくお喋りしてるわね」
「宮子」
振り仰げば唇を盗まれる。
「仕事片付けたら戻るよ。それまでユキ姉にかまってもらいな」
「うん」
もう一回キスが落ちて、片手だけヒラヒラ振った真を見送った。
「外、蒸したでしょ。甘いのより泡がいいかしら?」
「んー・・・そうだね、たまには」
いつもの席に腰掛けて何気なく見回す。
お客はまだあたしだけ。BGMに流れるジャズフュージョンの音量は前と変わんないのに、脇がすーすーして、なんだか静かすぎるよな。
榊がいないだけなのに。
昨日から色んなことがありすぎて、両足が泥沼にめり込んでる。重たい、進まない。踏ん張らなきゃ、ひとりで。真の両手はもう塞がってる。
出来ることを考え続ける。もがく。止まったら沈む。動いてよ、足。
時折り運転手の西沢さんに仕事の指示を出しながら、真はあたしに無理に話しかけることもなかった。行きも帰りも時間の感覚が曖昧で、長かったのかそうでもなかったのか、着いたと思ったら亞莉栖の前だった。
「あら。チヨちゃん久しぶり」
カウンターの向こうから、相変わらず見た目は清涼系お兄のユキちゃんが、ニッコリ微笑んで迎えてくれる。
「ユキ姉、オレはまた後で来るからさ」
「じゃあオンナ同士で楽しくお喋りしてるわね」
「宮子」
振り仰げば唇を盗まれる。
「仕事片付けたら戻るよ。それまでユキ姉にかまってもらいな」
「うん」
もう一回キスが落ちて、片手だけヒラヒラ振った真を見送った。
「外、蒸したでしょ。甘いのより泡がいいかしら?」
「んー・・・そうだね、たまには」
いつもの席に腰掛けて何気なく見回す。
お客はまだあたしだけ。BGMに流れるジャズフュージョンの音量は前と変わんないのに、脇がすーすーして、なんだか静かすぎるよな。
榊がいないだけなのに。



