乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

あんたの命をこの先もずっとずっと、繋ぎとめるにはどうしたらいい?
どんな言葉で楔を打ち込めばいい?

「できないなら、こんなとこにいないでカタギに戻んなさい。今からだって遅くないんだから・・・っ」

榊は、ふつうの家で育った、ふつうよりちょっと口が重くて、ふつうより愛想なくて、ふつうより誤解されやすいだけの、極道とは無縁なフツウの子供だった。生まれたときから人生が一本道だったあたしや真とは違う、普通の。

冗談かと思ってたら、両親に勘当されてまで一ツ橋組(ウチ)の門を叩きにやってきて。親からもらった物はスマホもお財布もぜんぶ置いて着のみ着のまま、家から五時間近くかけて歩いてくるようなバカ真面目。

選べる未来はいくらだってあったのに。・・・うれしかったな。言えなかったけど。家族以外で初めて、背中を預けて後悔しないって信じられたんだよ。

ねぇ榊。

「カッコつけの死にたがりなんて、お断りなんだからねっ?」

答えを訊くつもりはなかった。イスから体を翻しかけて腕をつかまれた。気が付いたら骨ばった胸元に閉じ込められてた。

「戻る場所なんかねぇよ、・・・ここしか」

頭のうえで低く呟かれた。

「ここで逝きてぇんだよ俺は」