乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

「宮子お嬢の覚悟(ハラ)が決まったのなら上々だ。・・・榊の迎えは明日よこす、しっかり養生しておけ」

「・・・ありがとうございます」

淡く口角を上げて哲っちゃんが締めくくったのを、上半身を折って一礼した榊。松葉杖に手を伸ばしかけた真をあたしは呼び止めた。

「ちょっと榊に話あるから先行ってて」

「外で待ってる」

金属製の扉が重そうに閉まり二人だけになった。

ベッド脇の空き椅子に座り直して視線を持ち上げる。どんな文句でも吸い込みそうな眼があたしを見てる。無意識におへその辺りがきゅっとして、口を開いた。

「殴ったのはやっぱり謝んないからね?」

「一発じゃ足りねぇくらいだろ・・・」

「紗江だったら連続往復ビンタだよ。絶対あたしより根に持つよ?」

わざと睨めば、バツが悪そうに明後日を向く。

「榊」

「・・・なんだ」

「もう一回言わせてよ。・・・あんたの命、あたしにちょうだい」

頬がちょっとこけて前より尖った顔付きの男が、(くう)を仰いで息を止めたように見えた。

「どこにいてもそばにいなくても、指一本になっても、どんなに面倒臭くたって一生、あんたとあたしは切れないの。榊の泣き言なんて二度と聞かない。これからは榊がしたいことをあたしにするんじゃなくて、あたしがして欲しいことをあんたがするの、あたしの為に死ねないの」