乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

イスに落ち着いて、高津さんの一言一句をたぐり寄せながら。あの束の間の出来事を打ち明けると、真から吹き上がる冷気が氷点下になった。

「なんで俊哉に教えねーの?」

魔王降臨。声に人間味が全くない。あたしは、まな板の鯉。

「騒いだら織江さんをもっと心配させちゃうし、台無しにしたくなかったんだもん・・・」

「高津を野放しにしとく方がよっぽどだろ。オリエさんになんかあったら?相澤代理にどうやって詫び入れるつもりだったの」

「それは、でも、用があったのはあたしにだけで、危ない感じでもなかったから・・・っ」

「・・・オマエね」

「その辺にしとけ。今は高津の話に乗るかどうかが先だ」

仁兄の(あたしにとっては)救いの手に、髪をくしゃくしゃに乱して真は小っちゃく舌打ちを漏らした。

「宮子に借りを返すイミが分かんねーよ」

「ただの損得勘定で割り切らねぇでどうする」

たしなめた哲っちゃんが誰かに電話をかける仕草で。

「・・・藤代か、店を知りたい。高津晶か北原千也がらみでな、名前はルナティックだ。・・・ああ頼む」

相手はユキちゃん。目が合った。

「聞いてからでも遅くないでしょう。・・・もしも俺のお嬢をコケにしてくれた時は、100日かけてゆっくり殺してやるさ」

スーツの内ポケットにスマホを仕舞い、脚を組み直して滲ませた妖しい笑みは。見たことないくらい残忍だった。