乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

「シンガポールなら志信兄貴のコネがある。アテにさせてもらう」

「・・・行けば治る、んだよね・・・?」

「駄目なら次を探すだけだろうが」

あっさり言い切られて、ああそっかぁ、って。体から力が抜けた。

折れそうになってんのは、あたしだけだ。みんな耐えて背筋張ってる。

「他にねーのは分かるんだよ。けど、時間がかかりすぎんじゃね?」

溜息に隠した真の焦りとイラ立ちが手に取るよう。すぐにでも助けたい気持ちは一緒だよ。今度はあたしから手を握り返す。

「ブローカー抜きで下手に動けば、カモにされて終わりだ」

「通訳なんかアプリにやらせりゃ十分だろ。やっぱオレが現地(むこう)に飛んだほうが早い」

「お前が宮子をひとりにして意味があるのか言え」

低く凄んだ仁兄に言葉を詰まらせた真。アイドル顔が苦そうに歪んだ。

会話の流れで想像した。信用できるブローカーを探せないと確実に成功しない、そういうこと。きっと承知してても、真は言わずにいられなかったんだろう。

右も左もどころか、会話も通じない国に大事な“家族”を送り出すんだから、仁兄が慎重なのは当然だ。もどかしい。由里子さんみたいに世界中を飛び回ってたら、あたしだってなんか役に立っ。

次の瞬間。頭の中の導火線に火花が走った。

「・・・高津さん」