空いてるパイプ椅子に手招きされると、松葉杖を立てかけた真もかたわらに腰を下ろす。半分あたしの方へ向き、ひと呼吸おいて続けた。
「松田センセイはほんとに命の恩人なんだよ。フツウの病院に連れてけないのを承知で、できる限り俊哉を助けてもらった。また一緒にメシ食えるのも、宮子がブン殴れるのも全部センセイのおかげでさ」
医者だから治して当たり前、じゃない。もちろんあたしだってこの恩は一生忘れない。
「だからこの先、俊哉がどれだけ生きられるかは運まかせでも、松田さんを恨むのはナシな」
え。
「穴空いた内臓がどこまでもつか分かんねーって言われてる」
耳の奥に焼き付いて。
世界が止まった。
榊を見た。榊もあたしを見てた。いつもと変わんない不愛想であたしを見てた。
「・・・心配するだけ無駄だって言ったじゃねぇか」
静かな眼差し。揺らがない眼差し。
「しぶとく長生きするかもしれねぇし、そんなのは俺にも分からねぇよ。・・・お前にそんな辛気臭い顔させるくらいなら、さっさとくたばった方がマシだ、ドアホ」
見えない指先でデコピンされた。けっこう痛くて声が震えた。
「・・・・・・あんたはなんで、いつもそ、・・・っ」
そこは強がってでも言い返すとこだったのに。地面の下で水道管が破裂したみたいに、心臓が破けた。
あたしの心臓ってこんなに薄皮だったんだ。知らなかった。
「松田センセイはほんとに命の恩人なんだよ。フツウの病院に連れてけないのを承知で、できる限り俊哉を助けてもらった。また一緒にメシ食えるのも、宮子がブン殴れるのも全部センセイのおかげでさ」
医者だから治して当たり前、じゃない。もちろんあたしだってこの恩は一生忘れない。
「だからこの先、俊哉がどれだけ生きられるかは運まかせでも、松田さんを恨むのはナシな」
え。
「穴空いた内臓がどこまでもつか分かんねーって言われてる」
耳の奥に焼き付いて。
世界が止まった。
榊を見た。榊もあたしを見てた。いつもと変わんない不愛想であたしを見てた。
「・・・心配するだけ無駄だって言ったじゃねぇか」
静かな眼差し。揺らがない眼差し。
「しぶとく長生きするかもしれねぇし、そんなのは俺にも分からねぇよ。・・・お前にそんな辛気臭い顔させるくらいなら、さっさとくたばった方がマシだ、ドアホ」
見えない指先でデコピンされた。けっこう痛くて声が震えた。
「・・・・・・あんたはなんで、いつもそ、・・・っ」
そこは強がってでも言い返すとこだったのに。地面の下で水道管が破裂したみたいに、心臓が破けた。
あたしの心臓ってこんなに薄皮だったんだ。知らなかった。



