乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

「・・・たまには素直に騙されてろ。あとでお前に恨まれるくらい、俺はどうってこともない」

縁なし眼鏡のブリッジを押し上げ、あたしを一瞥した仁兄。瞬間、目の奥が苦そうに揺れた気がした。

「宮子お嬢に嘘はこれきりです。二度はないから赦せ」

「哲っちゃんまでやめてよっ」

一ツ橋を束ねる若頭が両膝に手を置き、頭を垂れたのを泣きそうになった。200%愛情に決まってるから余計に切なかった。

「あたしはただ・・・!」

「頼んだのは俺だ、相手を間違えるんじゃねぇよ。・・・いいから好きに殴れ」

はじめて届いた低い声に向かって、ようやく視線を縫い止めたあたし。

患者衣姿で上半身を起こしてる榊は、硬そうなベッドの上で顔色が冴えなかった。でも手加減しようとは思わなかった。

「聞きたいのはザンゲじゃなくて理由なんだからね。なんであんなこと言ったのか、極道(オトコ)なら筋通してみせなさいよ」

親友なら。とは言わない。弱ってない眼力はあたしが信じてる男のだった。真っ直ぐ見据えた。

十秒、数十秒、微動だにしなかった底無しの眸が何かを断ち切るように、ついと逸れた。

「・・・そうだな」

「宮子」

口を開こうとした刹那、やんわり真が被せる。

「オマエに話してないことがあってさ」