乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

一転して煌々と明るかった。空気もそれなりに冷えて、蒸し暑さから解放される。

「みやけドクタは、いないですヨ」

リズミカルに聞こえた第一声は、流暢とまではいかない日本語。パンツスタイルのナース服を着た、東南アジア系の女性が目をくりっとさせ、こっちを盗み見た。

「あー大丈夫、見舞いだから」

真のくだけた口調に「ドーゾ」と白い歯を見せて、下心ありげに笑み崩す。・・・持って生まれたアイドル顔は、世界中の女に通用するかも。

視線を巡らせる。カーテンが閉め切られた窓、()せたタイル柄の床、くすんだクリーム色の壁。色んな箱を詰め込んでるガラス棚は、向こうに残ってた不用品ぽい。辞めた物流会社と雰囲気が似てるのを思い出した。元はたぶん休憩室か会議室。

雑然としてるけど、そこはどう見ても病人を治療するための診察室だった。シノブさんの紹介のモグリって聞いたから想像はつく。つまりは廃倉庫に隠れた違法な闇病院で、ミヤケ先生がブラックジャックってことなんだろう。

「西沢、なんかあったら呼んで」

真が出した指示で彼以外の三人は戻ってった。

「宮子」

目配せした真を追い、薄汚れたパーティションの裏へ。奥にドアが二枚、手前のノブをあたしが回す。

5畳くらいの白くて殺風景な病室・・・というか。小窓のうえにエアコンがあるだけ、ベッドはひとり分。その脇でパイプ椅子に座ってたのは仁兄と哲っちゃんだった。

「すみませんお嬢。堅気の病院なら喜んで連れて来たんですがね」

おもむろに組んでた脚を下ろし、哲っちゃんが淡く笑みを滲ませる。