乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

いつも濃い色付きグラスをかけてる彼の、初対面の印象はわりと不気味だった。話すとわりと恥ずかしがり?で、榊2号な感じで、ふつうに安心できる。預けられる。

スモーク越しに流れる景色をぼんやり眺めながら、あたしは真と、からめた指で会話してた。きゅっと握ると黙って握り返される。あやすように、ずっとそうしてくれた。

「・・・着きました宮子お嬢」

途中、コンビニで冷たい飲み物を差し入れてくれた黒スーツの西沢さん。運転席を降り、外からあたし側のドアを先にスライドさせる。

お礼を言って表へ出ると、ワゴン車組のいかついお兄さんが三人ほど、並んで待ってた。

『お疲れっス!!』

「お疲れさまです」

小さく会釈して辺りを見回した。高窓はあっても薄暗くて、湿った土とさびた匂いが漂う大きい倉庫の中。駐車場代わりに使われてるのか、別にミニバンが2台と配送用のトラックが離れて停まってる。

「宮子、こっち」

真に呼ばれ、ぞろぞろと入り口じゃない通用口からいったん倉庫を出る。目の前に二階建ての古びた事務所が建ってて、風よけ室がある玄関の先へと断りなく進んでくのを、あたしはただついてくだけ。

机やスチール棚が壁際に寄せられ、天井にむき出しの配線が残ってるけど他はなんにもない。うちの離れの座敷より狭いフロアを突っ切り、給湯室ってプレートが貼られた左端のドアを、先頭の西沢さんがためらいなく押し開けた。