乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

「もう殴っちゃった、・・・榊のこと」

真の懺悔が切なく耳に響いたのを、ようやくあたしも打ち明け。

「そっか」

「聞いた?」

「オフクロに」

「あたしに心配すんなって。跡目の仕事じゃないとか言い出すから、ついね」

真に体重を預け、ぽつぽつ吐き出してく。

「榊らしくないよ、だから謝んない。でも絶対なんか理由があんでしょ。だったらちゃんと聞くし、ちゃんと話する気でいたらこんなことになってるんだもん。哲っちゃんと仁兄にまで騙されちゃった・・・」

「宮子に訊かれたら検査で通せって、オレが頼んだの」

優しい嘘つき。きっと逆。たぶん真犯人は仁兄で哲っちゃんも共犯。

「オレが、オレ達が思うのは何があってもオマエが笑えることでさ。そこだけは1㎜もブレたくないんだよ」

「わかってる。つもり」

「俊哉に会いたいならこれから連れてく。どうする?」

「行く!」

顔を上げて目が合った真はどっか儚そうに笑った。

エレベーターで下まで降りるとエントランスの表に黒のミニバンと、離れてワゴン車がハザードを点滅させて待機してた。はじめから榊のところに向かうつもりで、人数を揃えてきたんだろう。

あたしと真が二列目シートに乗り込むのを待って、ミニバンが静かに滑り出す。運転手の西沢さんは、榊とは別の意味で真の片腕って呼べる人になった。なってくれた。