乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

今のあたしと真は引き合う磁石じゃなくてきっと、弾き合う磁石。分かりたいけど分かったフリはどうしてもできない。

ねぇ。ひとりだけ置いてけぼりにされてる寂しい気持ちは、ただのワガママ?

真や榊、みんなのくれる優しさでビン詰めにされてれば幸せ?

あたしが貫きたい『臼井宮子』は間違ってる?

ここまで出かかって、咄嗟に掴まれてた手を振りほどく。口に出したらどれも真をひどく傷付けそうで、いたたまれなかった。

「みや」

「ッッ・・・ごめんっ」

顔も見ないでそのまま事務所を飛び出し、自分の愛車に乗り込む。表門と裏門は遠隔操作で開けてもらえないだろうから、哲っちゃんちの方へ回って外に出た。

運転するのも一人なのも久しぶりだ。家を出てた頃を思い出す。真と一から向き直るためのひとり暮らしだった。

このままあてもなく遠くまで走りたい衝動。そんなことしたら本家が総出であたしを追いかける羽目になる。警察も騒ぎを見逃さないだろうし、思わず自嘲めいた笑いが小さく零れた。

「・・・家出もできないよねぇ」

行き先はマンション。他に思い付かない。広くない駐車スペースに丁寧に車庫入れして部屋へ向かった。

頭冷やすくらいの時間がほしかっただけ。だからスマホの電源を切らなかった。GPSで居場所を辿れる意味が真には通じると思ったから。