乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

息を切らせて哲っちゃんちに飛び込むと、早足で離れの部屋へ。通り過ぎたリビングの奥から瑤子ママの声がしたのを、返事もしないで。

バスルームに直行して上から勢いよくシャワーを浴びる。走ってかいた汗と頬に張りついた涙を洗い流し、髪も半乾きのままロングTシャツ一枚でベッドにダイブした。

まだ火種がくすぶって、あたしの中はところどころ燃えてる。青色、朱色、黒色、熱い炎、冷たい炎。

だって榊が。

あたし達と並んでる資格がないって言おうとした。

あんたは死んでも言わないって信じてた・・・!

最後まで隣りにいるって約束したよね?

全部くれるってそういう意味でしょっ?

榊のバカ、大バカ、うそつき。

ソンナ男ジャナイ。

どっかで聞こえる。

なんとなく耳を塞ぎたくなった衝動に駆られた刹那。室内用のインターホンが鳴って、扉の外から瑤子ママの優しい声がした。

「宮子ちゃん、よかったらお茶に付き合ってちょうだい。せっかく買ってきてくれたお菓子、ひとりで食べるの寂しいわ」

突っ伏してた布団からのそのそ体を起こした。・・・ああそっか。お土産ぜんぶ榊に持たせてたんだっけ。

大きく溜息を漏らすと、湯上がり用のショートパンツを足に通して、とぼとぼリビングへ向かう。

榊がどこまで話したかは分かんないけど、ただいまも言わないでママを心配させたのは紛れもなくあたしだ。