乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

勝手にやってきて、勝手に押し付けてったパンドラの箱。

榊がどうだっていうの。みんなが嘘ついてるなんて、あたしが高津さんを信用する理由がないじゃない。借りを返しにだなんて、もっと見えすいてる。

・・・だけど。

あたしと織江さんに近付けば、真も相澤さんも容赦ないのを知ってるのに?わざわざ危ない橋わたってまで?

悪ふざけにしちゃリスクが高すぎるじゃない。あたしの知ってるかぎり、高津さんはムダで無意味なバカはしない男だった。

気取られないように逃した溜息。胸の中で、口を解かないままの袋を拾い上げる。

ゴミだって分かったら捨てるわよ、高津晶の存在ごと永久に。

考えてるうちにいつの間にか転た寝してたみたい。気が付けば実家はもうそこで、しかも護衛されてる本人は爆睡で。心底反省しました。

玄関先まで荷物を運んでもらったのを、あらためて角さんにお礼を言う。中身はバームクーヘンだったかどれだったか、洋菓子っぽい手提げ袋をおずおずと差し出した。

「好みがわからなかったから、苦手だったらすみません」

「あー・・・喜んで食いそうな女がいるんで、ありがとうございます」

さらっと流した角さんの眼差しは、どことなくバツが悪げだった。

ドライに見えて実は隠れてた照れに、ちょっとほっこりしたのは内緒。