乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

あたしに伝えたかった一番は、これだったのかもしれない。

無事を願ってくれる切実な思いは、相澤さんの帰りを待つ彼女の祈りにも聞こえた。

「・・・極道の神サマはときどき意地悪なんですよねぇ。でも」

やんわり抱き締め返しながら、鼻の奥がつんとする。

「大丈夫です、織江さんを絶対泣かせないって約束します。あたしも榊もすっごく往生際が悪いし、勝手に置いてくと紗江に死ぬほど恨まれちゃうから」

小さく笑うと、体を離した赤い目の織江さんがやっと笑みをこぼした。

「わたしも約束するわ。宮子さんがくれた約束を信じる・・・って」

「また遊びに行きますねっ、雅ちゃん達に会いに」

あたしから“次”を口にして明るく手を振り、それぞれの車に乗り込んで別れた。

表の通りに出ると、フロントガラスの向こうで暮れがかった空は濃い曇り。雨を予知するスマホの天気アプリについ、荷物の多さが気になる。織江さんにつられてお菓子のお土産、けっこう買っちゃったんだよねぇ。

運転手の角さんと助手席の榊が、渋滞がどうのって話してるのを聞き流し、目を閉じた。スモーク越しじゃ景色も味気ない。

楽しかったアレコレを思い返し、大切に包んで心の引き出しに仕舞う。仕舞った足元には口を縛った袋がひとつ。

見下ろして立ち尽くす自分がいた。