乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

別の商品に目移りした素振りで歩き出しながら、時間差でカオスの大波が押し寄せてくる。

あんなの、真や相澤さんへのただのパフォーマンス(当てつけ)かもしれないし、あたしを脅かして悪そうにほくそ笑んでるかもしれない。外見だけじゃなくて中身まで変わったかもしれないじゃない・・・!

借り。伝言。色んなワードが逆巻いた。自分の中の嵐に袋を被せ、無理やり口を縛った。

何より織江さんの笑顔を曇らせたくない。今日は。今日だけでも。小さく暴れてる葛藤を隅に放った。

「動物の箸と箸置きが可愛くてどれにするか迷っちゃって」

市松模様のショップの手提げを片手に嬉しそうな彼女。

「見てると結局、自分のものじゃなくて家族のものを探しちゃうの」

「分かります、買って帰って、喜んでくれる顔が見たいんですよねぇやっぱり」

「毎日じゃなくてもほんの少しでも、そう思えるときがあるから幸せなのね」

優しく微笑み返された。

・・・そうですよね。一生懸命がんばって探さなくても、真と榊が空気みたいに隣りにいてくれる当たり前も、仁兄や哲っちゃんが寄り添ってくれる当たり前も、もうとっくにあたしのシアワセなんですよね。

集中した気配で先頭を歩く黒い背中を見つめた。

ねぇ榊。
あんたが願ってる幸せはどこにあるの?