仁兄の後押しが響いたらしく、殊勝に頷いた榊に思い出して付け加える。
「ユキちゃんがね、元気になったら亞莉栖でお祝いしようって。相澤さんでしょ?シノブさんでしょ?甲斐さんもお見舞いに寄ってくれたし、みんな呼んでお礼しなきゃね」
「ムリすりゃ治るってもんじゃねーの。焦んなよ俊哉」
他人の言ったキレイゴトだったら榊には刺さんなかったと思う。誰でもない、一生治らない傷を負った真の本心だったから。
榊の空気が変わった気がした。眼差しに強さが滲んで、痩けた顔付きに意地が戻って見えた。
「どうだい榊は」
そこへ哲っちゃんが悠然と入ってきたのを、眼鏡のブリッジを指で押し上げる仕草で仁兄が立ち上がった。
「俺は先に戻る。真、お前は宮子と親父の車で帰ってこい」
ベッドの足許から榊に。
「こっちの後始末はじきにつく。養生するのがお前の仕事だぞ」
「・・・っす」
背中を見送るあたしの横に立った哲っちゃんが、榊に淡く笑んだ。
「宮子お嬢をこれ以上泣かさずに済んだじゃねぇか」
「若頭・・・・・・」
「礼を言う。見込んだ通り大した男だったな。これからも存分に俺の役に立てよ?」
「・・・りがとう、ございます・・・」
哲っちゃんの最上級の褒め言葉に聞こえた。
命を張れ、じゃない。『役に立て』を榊も静かに噛みしめてるようで。なんだかまた鼻の奥がつんとした。
「ユキちゃんがね、元気になったら亞莉栖でお祝いしようって。相澤さんでしょ?シノブさんでしょ?甲斐さんもお見舞いに寄ってくれたし、みんな呼んでお礼しなきゃね」
「ムリすりゃ治るってもんじゃねーの。焦んなよ俊哉」
他人の言ったキレイゴトだったら榊には刺さんなかったと思う。誰でもない、一生治らない傷を負った真の本心だったから。
榊の空気が変わった気がした。眼差しに強さが滲んで、痩けた顔付きに意地が戻って見えた。
「どうだい榊は」
そこへ哲っちゃんが悠然と入ってきたのを、眼鏡のブリッジを指で押し上げる仕草で仁兄が立ち上がった。
「俺は先に戻る。真、お前は宮子と親父の車で帰ってこい」
ベッドの足許から榊に。
「こっちの後始末はじきにつく。養生するのがお前の仕事だぞ」
「・・・っす」
背中を見送るあたしの横に立った哲っちゃんが、榊に淡く笑んだ。
「宮子お嬢をこれ以上泣かさずに済んだじゃねぇか」
「若頭・・・・・・」
「礼を言う。見込んだ通り大した男だったな。これからも存分に俺の役に立てよ?」
「・・・りがとう、ございます・・・」
哲っちゃんの最上級の褒め言葉に聞こえた。
命を張れ、じゃない。『役に立て』を榊も静かに噛みしめてるようで。なんだかまた鼻の奥がつんとした。



