ふだんは用心して大通りしか使わないのが鉄則の及川さんは、裏道を抜け、できる限り急いでくれたと思う。車が病院の正面玄関近くに音もなく横付けされて、あたしは自分でドアを押し開ける。
「先行ってるねっっ」
哲っちゃんの返事は聞き流し、ト-トバッグを肩がけして小走りに駆け出した。
抜けたエントランスの先でもどかしくエレベーターを待つ。三階に上がり廊下を早足。非常口手前のドアを横にスライドさせて中へ飛び込んだ。
「榊はッ・・・?!」
いたのは仁兄と真だけ、看護師さんや先生の姿はなかった。
「呼んだら返事したよ、あんまり動けねーけどさ」
「筋力も体力も落ちてるしな。しばらくはリハビリだ」
ベッド脇のイスに腰かけた真のそばに寄ったあたしに、テーブルスペースに座ってた仁兄の声が追いかけてきた。
横になってる男の顔を覗きこめば、昨日までより血色よく見えた。生気が通ってる気がした。
「榊ぃ・・・っっ」
床にへたり込みそうになるくらい心底安心して、やっぱり涙が零れた。
この十二日間、あんたもあたし達も、負けらんない闘いをよく耐えたね。頑張ったね。でもこんなのは二度とごめんだからね。
「なにやってんのよ、あんたはぁっ」
泣きながら笑って、怒った。
「どんだけ心配かけたら気が済むのよ、ばかぁ・・・!」
「・・・・・・る、・・・せ、ぇ・・・」
「先行ってるねっっ」
哲っちゃんの返事は聞き流し、ト-トバッグを肩がけして小走りに駆け出した。
抜けたエントランスの先でもどかしくエレベーターを待つ。三階に上がり廊下を早足。非常口手前のドアを横にスライドさせて中へ飛び込んだ。
「榊はッ・・・?!」
いたのは仁兄と真だけ、看護師さんや先生の姿はなかった。
「呼んだら返事したよ、あんまり動けねーけどさ」
「筋力も体力も落ちてるしな。しばらくはリハビリだ」
ベッド脇のイスに腰かけた真のそばに寄ったあたしに、テーブルスペースに座ってた仁兄の声が追いかけてきた。
横になってる男の顔を覗きこめば、昨日までより血色よく見えた。生気が通ってる気がした。
「榊ぃ・・・っっ」
床にへたり込みそうになるくらい心底安心して、やっぱり涙が零れた。
この十二日間、あんたもあたし達も、負けらんない闘いをよく耐えたね。頑張ったね。でもこんなのは二度とごめんだからね。
「なにやってんのよ、あんたはぁっ」
泣きながら笑って、怒った。
「どんだけ心配かけたら気が済むのよ、ばかぁ・・・!」
「・・・・・・る、・・・せ、ぇ・・・」



