乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

途端に色んなものが込み上げた。哲っちゃんにしがみついて堪えた。体中が叫んでた、震えてた。

こわかった。怖かった。こわかった。あたしも真も、榊がいない未来なんて耐えられっこなかった。

他になんにもいらない。みんなといられる明日があればいい。『四人でご飯たべよーよ』って、紗江と何てことない約束ができたら、それだけでいいからっ。

おねがい。

誰にか分かんないけど祈った。

あたし達から取り上げないでよ。せめて、今この手にあるものを守らせてよ・・・!!

「・・・・・・哲っちゃん」

「なんです」

「ずっとあたしの哲っちゃんでいてね。ずっとそばにいてね?」

「・・・お嬢の頼みを断る男だとでも?」

小さく(かぶり)を振った。

「お前はただ俺を信じてりゃいいのさ。心配は無用だ。仁も雪緒も、相澤も志信も、誰ひとり欠けさせやしねぇよ」

この世に絶対なんてないって分かってても。哲っちゃんの言葉が、ぬかるんでたあたしの奥底を固めた地面に変える。ふらついてた芯が上に向かって真っ直ぐ張る。

「・・・哲っちゃんが言うんだもん、信じる。ごめん、・・・もし誰かがほんとにいなくなったらって、急に怖くなって、・・・ごめんね」

「今は素直に榊の無事を喜んでやればいい」

頭を撫でてくれた掌の温もりがやたら目に染みて。借りた胸をちょっとだけ濡らした。

泣くのは榊の顔を見るまで取っておけって、優しくあやされながら。