乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

振り向かないまま。『呼べ』って。

ちゃんと声の届くとこにいるって。

あたしには音沙汰ナシだった男が。

そういうことは早く教えなさいよ。

なんだか口惜しかったのと、なんにも変わってないのが心底嬉しかったのと。ごちゃ混ぜになって半泣き笑いになった。

「呼ばなくたって助けるクセに・・・っ」

『ほっとけ』って返事してくんなかった。でも。

あの日から、見えない刃になってあたしの前に立ちはだかってくれてたんだ。そこにいたんだ、ずっと・・・!

もう一回ちゃんと榊を捕まえようとして。

「宮子お嬢」

振り返った後ろに、真と似たユルい格好の角さんが立ってた。指先が宙で止まった。

「凛と響矢が待ってるんで」

時間切れ。ぜんぶ見透してたみたいな言い方だった。

「榊、行けよ」

「・・・頼みます」

「待っ」

行き交う人波に吸い込まれてく背中へ向かって、精いっぱい伸ばした腕。

ほんのわずか榊の横顔がこっちに(かし)いだ。気がした。次は、正面からあたしと相対してくれる気がした。

「おかあさんもう、はなび、はじまっちゃうよぉっ」

「ごめんねー、迷子になっちゃった!」

可愛く膨らませた凜のほっぺを優しくつつきながら腰かけ、抱っこをせがむ響矢を膝の上に乗せる。

「犬のおまわりさんがいたろ?」

「ん。・・・ちっともお嬢の言うこと聞かないおまわりさんだったけど、ね」

真が目で笑った。