乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

お腹の底がきゅっと引き締まった。榊は花より団子だろーけど、お日さまみたいな明るい色のブーケを飾りたい気分。

病院への道すがら、大きいスーパーに寄ってもらおうと隣を見上げた。

「ねぇ哲っちゃん、どっかでお花・・・」

話しかけたのとちょうど、スーツの胸ポケットあたりでバイブ音。哲っちゃんはあたしに断ってからスマホの画面に目を細め、耳に当てた。

「仁か。・・・どうかしたか」

『宮子は一緒じゃねぇのか?親父』

音のない車内に()いたような声が漏れ聞こえた。

『松田医師(せんせい)から連絡があった、榊の意識が戻ったぞ・・・!』

少し早口で、でも仁兄がはっきりと。思わず伸びた手が哲っちゃんのスマホをもぎ取る。

「仁兄っ、ほんとに・・・ッ?!ほんとに目が醒めたの?!」

『こっちも向かってるところだ、宮子も早く来い』

言うだけ言って通話は切れた。

真っ暗になって沈黙したそれを握ったまま、茫然と。ユキちゃんに励ましてもらった矢先で、思わない突然だったから夢なのかと思った。信じていいのか一瞬わからなくなった。

やんわりスマホを抜き取った哲っちゃんが、言葉を失くすあたしを抱き寄せた。

「三途の川を渡らずによく辛抱してくれたな」

「・・・っっ」

「俺の誇りだ、榊もお前も」