乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

世界がユキちゃんで埋まってたからか、いつもなら聞き逃さないはずの松葉杖を突く音が、全く耳に入ってなかった。振り返って目を瞬かせたあたしに、真が意地悪っぽく。

「宮子には『ユキ姉』が速攻で効くねぇ。キゲン治った?」

「別にへこんでないからね?榊がちょっといなくなるくらいっ」

「けど、オマエがオレに言えないことを言える相手は、俊哉かユキ姉しかいないしさ」

もしかして。いきなり腑に落ちた。

「相談役って、そういうこと・・・?」

「分かってんだろうけど、リンと宮子を亞莉栖に連れてくわけにいかねーから、ユキ姉に出張してもらうんだよ。けっこう口説くの大変だったの、ホメて?」

アイドル顔が甘く笑ってる。

「お店は、マコトちゃんとトシヤくんとチヨちゃんがまた三人で来てくれるまで、知り合いの()に手を借りることにしたわ」

夜じゃないのに。三つ揃いがすっごく格好良いのに。やっぱりユキちゃんは“お姉さん”の方がしっくり。秘密基地のようなあたし達の居場所は()くさない約束をくれる。

「いつでも、ユキちゃんが会いに来てくれるの?」

「宮子お嬢が望むなら」

「帰したくないかも」

「殺し文句だな」

陽の下で微笑むユキちゃんは、黒い翼を広げた天使に見えた。