それまで全く気配に気付かなかった。落ち着いた声と一緒に、格子調の引き分け戸がスライドする。膝に両手を添え正座して、仁兄とも違う冴えた空気をまとった男がゆっくり、黙礼した顔を上げた。
「ご苦労でしたね、こちらへお掛けなさい」
「はい」
おばあちゃんに促されたそのひとは、流れるような所作であたしの横にしなやかに腰を落とす。
黒の三つ揃いにブルーグレーのシャツ、シルバーのネクタイ。グレージュに染め変えた髪は後ろに流し気味で、線の細い輪郭が引き立つ。
穴が空くほど見つめる。ううん、見惚れてる。
「なんでユキちゃん・・・?」
日本語がヘン。そうじゃなくて、だって、ここにいるのが変。
「このまま終われないのをトシヤに教えられたから、かな」
やんわり弧を描いた眼差しがこっちを向いた。
「相談役なんて仰仰しいけどね。期待されるだけの働きはするつもりだよ、宮子お嬢」
男言葉で。スーツは一度目は結婚式で。ユキちゃんだけど、ほんとにあたしのユキちゃん?
呆けてるあたしにおばあちゃんが、しっかりなさい、とばかりに助け船を出してくれる。
「宮子、少し庭を歩いていらっしゃい。そのうち真さんも戻るでしょう。藤代、任せましたよ」
「承知しました」
合わせて立ち上がったユキちゃんは、結い髪の後ろ姿に浅く礼を返すと、あたしに手を差し出した。
「光栄だね、大姐さんにエスコートを許してもらえるなんて」
夜色の眸で、涼やかに微笑んで。
「ご苦労でしたね、こちらへお掛けなさい」
「はい」
おばあちゃんに促されたそのひとは、流れるような所作であたしの横にしなやかに腰を落とす。
黒の三つ揃いにブルーグレーのシャツ、シルバーのネクタイ。グレージュに染め変えた髪は後ろに流し気味で、線の細い輪郭が引き立つ。
穴が空くほど見つめる。ううん、見惚れてる。
「なんでユキちゃん・・・?」
日本語がヘン。そうじゃなくて、だって、ここにいるのが変。
「このまま終われないのをトシヤに教えられたから、かな」
やんわり弧を描いた眼差しがこっちを向いた。
「相談役なんて仰仰しいけどね。期待されるだけの働きはするつもりだよ、宮子お嬢」
男言葉で。スーツは一度目は結婚式で。ユキちゃんだけど、ほんとにあたしのユキちゃん?
呆けてるあたしにおばあちゃんが、しっかりなさい、とばかりに助け船を出してくれる。
「宮子、少し庭を歩いていらっしゃい。そのうち真さんも戻るでしょう。藤代、任せましたよ」
「承知しました」
合わせて立ち上がったユキちゃんは、結い髪の後ろ姿に浅く礼を返すと、あたしに手を差し出した。
「光栄だね、大姐さんにエスコートを許してもらえるなんて」
夜色の眸で、涼やかに微笑んで。



