乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

『逃げていい』なんて、仁兄と哲っちゃんなら口が裂けても言わない。

人の道を外れる代償に命を張るのが、極道の生き様、覚悟。『男を上げて帰ってこい』って、甲斐さんもシノブさんも不敵に笑ったに決まってる。

真だってわかってる。それでも。純粋に、親友として間違ってないことを、あんたに言い忘れたくなかったんだよ。

黒スーツの男は、黙って真となにかを交わしてた。眼差しで、静かに。

それが約束だったのか、貫きたい意地だったのか、あたしには。

「オレらも行こっか」

真の掌がやんわり、区切りを付けるように頭の上に乗っかった。

餞は渡した。あとは『いってらっしゃい』で送り出すだけ。

手が届かなくなるだけ。あとは全部つながってる、ココロもキズナも、時間も空も…!

不意に目が合った榊へわざと素っ気なく。

「紗江には素直じゃない?」

「ほっとけ」

「なんか妬ける」

「・・・るせぇよ」

ついと逸らした瞬間。(サイド)を刈り上げて覗いてる耳たぶが、夕焼けの(ダイダイ)より赤らんでたのが愛しかった。

照れたのを、精いっぱい隠した背中が愛しかった。

“寂しい”より“愛しい”を残して、榊は発った。

『じゃあな』って、相変わらずのぶっきら棒が、あたしにだけ笑った。