乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

日を追うごとに希望と絶望に掻き回される自分がいた。張ってる気持ちの糸がすり減ってくのを、必死に取り繕ってた。

なにより榊を信じきってないあたしを赦せなかった。しっかりしろって背中たたいて励ましてほしかった。

紗江に泣きつきたくなったのを何度も堪えて、言い聞かせても、自分の足が前へ出せてる気がしなかった。

モウ、ダメ。
ダレカ、タスケテ。

袋かぶせて、底に隠したSOSに気付いちゃったのかなぁ。だから真でも仁兄でもなく、ユキちゃん。・・・なのかな。

「俺に見とれて、どうかしたかい」

気配に(さと)い哲っちゃんには敵わない。ばっちり目が合って淡く笑まれる。

「あ、・・・うん。哲っちゃんは相変わらずイイ男だなぁって思って」

「お前がそう言うから男を下げられねぇのさ」

渋い色気に当てられて眩暈がしそう。

「哲司さん、チヨちゃんを口説くのはその辺で」

「邪魔すると馬に蹴られるぞ?雪緒」

「邪魔しないとマコトちゃんに蹴られちゃいますから」

「そんな度胸があるかねぇ」

口の端を緩ませて、本気っぽく冗談を交わすオトナな二人。

デザートのさくらんぼゼリー寄せをお腹に収めるまで、なんでもない普通の話をして、ときどき笑わせてもらって。亞莉栖にいるみたいに心地よかった。

結婚式の前々夜、四人で乾杯したのがずいぶん昔のような。気がした。