乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

方法もカタチも違うけど。守られて生きるしかないあたしとこの子のために、ふたりは全てを懸けてくれてる。だから。

「あたしは笑ってなきゃね」

お腹を優しくさすりながら言い聞かせる。

泣いても怒っても、どんなに苦しんでもしんどくても最後は笑うの。そしたら絶対、真とリンを幸せにできる。榊を後悔させない女になれる。

カウンターの向こうから、にっこり笑顔で頷いてるユキちゃんが浮かんだ。相変わらず効き目抜群な魔法。深呼吸する。自分にできることを数える。

夕方になったら真が病院から電話をくれる。辛いのを我慢してる笑い顔でも、折れずに闘ってる強さを信じよう。あたしが信じなかったら、真が闘う意味がなくなる。

努力が報われても報われなくても、真が笑うならとびきりの笑顔で抱き締めるの。悔し涙を流したら一緒に泣くの。

『よく頑張ったね』じゃなくて『ありがとう』。きっと、ほかの言葉はいらないの。

それから榊と。

・・・話したいことがもっとある気がすんのに、そういうんじゃない気もしてる。

言わなくても榊はわかってる気がする。だって、あたしとあんただから。

そうなんだけど。なんだか伝え足りない気もして。