乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

真だったらきっと笑って。

「あたしの為だって言うなら、ありがた迷惑だからね・・・?」

「テメェの勝手だって言ったろうが。・・・特別扱いしろとも言わねぇよ、破門でかまわねぇぞ」

「バカ言わないでよ」

言葉に躊躇いがなかった。覚悟は本物。いつだってあんたは。

目の前の、ずっと親友で家族だった男が急に大人びた。置いてきぼりにされそうで、心臓の奥の奥がジクジクする。よどみない闇色の眼差しを受け止めながら、強がって素っ気なく。

「リンが生まれるまでには戻ってきてよね、それならお父さんだって」

「帰らねぇよ。テメェが納得するまで、一年か二年かわからねぇ」

「な」

思わずひざ掛けを剥いでベッドから降り、仁王立ちしてた。

「わかんないって、そんなの行かせられるわけ…ッ」

榊は、反発されるのも百も承知だったと思う。揺らがない闇色の眼差しから逸らしたくなったのは、あたしの方。

「俺は足りねぇもんだらけだ。足らねぇままで後悔したくねぇよ」

「だからって待ってるあたしの気持ち、考えたことある?!」

目覚めないあんたを。
遠く離れたあんたを。
毎日毎日、どんだけ胸が千切れそうな思いで・・・!!

飛び出した本心に顔が歪んだ。泣くつもりなかったのに、勝手に涙が溢れた。