乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

頭の芯はわりと冷えてた。榊を信じてるから最後まで聞く。つっかえてた思考回路もどうにか。

「跡目が生まれても、今の俺じゃ役に立たねぇよ。お前が許しても、守れねぇなら意味がねぇ。このままでいたくねぇ」

なぞるように、自分自身にも言い聞かせてる気がした。

「日本に帰る前、高津さんの仕事に手を貸した。俺のケジメだ、見返りはねぇよ。ただ、使いものになんねぇ体でもやれるのは分かった。・・・それをテメェに叩き込むにはここじゃねぇ」

フローリングの床に落とした視線は一点を見つめて動かない。耳の中に声が波打つ、深く。

「俺の勝手だ、筋が通らねぇのは百も承知で言ってる。黙って行かせてくれ、・・・頼む臼井」

榊が頭を下げた。ガタイのいい男を見下ろしてる光景をはじめて見た。

一度だってなかった。ああしたいこうしたいってワガママも、“お嬢”のあたしに頼みごとしたことも・・・!

胸が詰まる。チリチリ焦がされる。引き留めても無駄なのが手に取るようで、でも簡単に『うん』て言えるはずなくて。

「行ったとこで、あのひとはあんたの手に余るんじゃないの?仲良しごっこが通じる相手じゃないでしょ」

「テメェの為の一番の近道が高津さんだってだけだ。馴れ合うつもりはねぇよ」

「危ない真似は赦さないから」

「・・・極道(もん)に言うセリフかよ」