乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

食欲が戻って食べられるようになってからは、朝ご飯と晩ご飯は哲っちゃんち、お昼をおばあちゃんと、・・・が日課。本家所有の不動産関係をいずれ引き継ぐ勉強会も兼ねて。

『お腹の子と宮子は繋がっていますからね。母らしく、しっかり勉強なさい』

甘やかされ放題な中で、おばあちゃんの愛のムチは緩まない。おかげで(たすき)を締め直せるあたしだった。

「臼井、・・・いるか」

ひと息ついて、実家の自分の部屋で出産情報雑誌をめくってると、扉の向こうから低い声で呼ばれた。

入ってきた黒スーツの榊を、ベッドでクッションを背当てに、ひざ掛けに包まったままの格好で迎える。

「おかえり。真は?どうだった?」

「リハビリ中だったからな、話してねぇよ」

「そっかぁ・・・」

午前中、着替えを届けに病院へ寄ってくれた報告に小さく溜息。

「根詰めて無理してなきゃいいけど」

「壊したら元も子もねぇのは、真が一番よく分かってんじゃねぇのか」

「でも、リンのお父さんは負けず嫌いだからねぇ?」

お腹をやんわりさすりながらつい、弱り笑いが漏れた。

「あたしには本音吐かないだろうし、榊が聞いてやってよ。おねがい」

壁際のソファに腰を下ろした男は一瞬黙った。見やって目が合った。

『おう』って、いつものぶっきらぼうを待った。