乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

目が合って。もうひとつの不安の正体を、ユキちゃんには見抜かれてた気がした。

すっかり知れ渡って、ほうぼうからお祝いが届いたり、今まで娘との距離を詰めようとしなかったお父さんまで、毎日様子を見に来たり。

くすぐったいくらい嬉しくて、しみじみ愛情を感じる分、期待や責任がまとわりついた。

“こんな奇跡は二度は起きない、どうしよう、ちゃんとしなきゃ” 

100%純粋に喜ぶより、自分で自分に呪いをかけてた。

朋美(ともみ)さんが遺したかったのも跡目じゃない。惚れぬいた男との証をただ抱きたかったんだよ」

お母さんもあたしを。

低くも高くもない、優しいのに強い声が矢になって、一瞬で黒い(もや)を散らした。

いつもは遠いとこから見守ってくれてるだけのお母さんが、すぐそこにいるような。もし生きてたらきっと同じこと言ってくれたのを、不思議と信じられる。

ほらね?ユキちゃんの魔法は特別。

「・・・ありがとユキちゃん」

このごろ涙もろくなってるあたしに、聖母のような慈愛の微笑みを咲かせる。

「お礼を言われるようなことは何もしてないよ」

「お礼しかないってばぁ・・・っ」

「宮子お嬢がそう思ってくれるなら、ここに置いてもらった意味もあったんだろうね」