乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

言われて振り返る。さっきまで、通路を挟んだ斜めうしろの二人席にいたはずの角さんは、いつの間にかいなくなってた。

テーブルの上にはドリンクバー用の、飲み替えたグラスが四つか五つ。退屈な護衛をお願いしちゃってほんと、申し訳なさすぎる。大事な虎の子を貸し出してくれる甲斐さんにも、一度ちゃんとしたお礼しなきゃ。

ぼんやり考えてるうち、トレーにグラスを三つ乗せた紗江が戻ったのを、懐かしく思い出してつい笑みが零れた。

「?なに?」

「高校の頃から変わんないなーって思って。いっつも紗江がみんなの分取ってきてくれたもん」

「座り順じゃない?だいたい宮子は奥に座るから、あたしが自然と通路側ってだけよ」

「そーだっけ?」

「あーそれ、宮子にクセつけたのオレ」

氷多めなジンジャーエールに口を付けながらなんでか、ダンナ様はドヤ顔。

「俊哉と紗江は昔から面倒見いーんだよ」

中心にいて、みんなを巻き込んで引っぱり回すのは真だった。でも羽目を外しすぎると止めてたのは榊で、怒らせたらおばあちゃんより怖いのが紗江、っていうのは刷り込まれてたよね。

「長男は榊クンでしょ」

「え、もしかしてあたしが末っ子??」

目を丸くしたら、ふたりに『今さら?』って顔された。

それはともかく長男発言は初耳。一番のしっかり者は紗江だから、本人も長女役を自覚してるんだとばっかり思ってた。