乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

「そう言えば紗江がお盆前に来るの、珍しくない?」

湿っぽい話ばっかりじゃなんだし、さらっと話題を変えてみたり。

「それなんだけど今度ダンナが異動になるのよね」

「どこに?!」

思わず声が大きくなった。まさかもっと遠くなるとか?!

「今より近くなるわよ?業績は好調らしくて第二工場を建ててたんだけど、やっと来年の春から稼働予定なわけ。ダンナも本社工場から移れって内示が出たのよ」

おおらかで子煩悩なダンナ様は、精密機器会社のエンジニアだったっけ。建設地は県内の、地図で言えば紗江の実家より東のほう。

「じゃあこっちに引っ越してくるの?!」

「三月までにね。いろいろ考えて家を買うことにしたから、親にも相談しようと思って。来るついでがあって良かったわよ、榊クンのことも聞けたし」

「とうとうマイホームを手に入れるんだー、楽しみだねぇっ」

「二人目も欲しいし、じいじとばあばをアテにして、実家とダンナの会社の中間くらいで探せたらいいのよねー」

「仁兄が不動産関係やってるし、情報あったら送ろっか?」

「ありがと。宮子はどう?コウノトリは来てくれそう?」

右脚が自由に動かせない真と体を合わせることはできる。ちゃんと愛し合える。でも妊娠は別の話。先輩ママの紗江には隠すことなく、前から打ち明けてた。

「んーやっぱり自然には無理そうかなぁ・・・。今年いっぱい待ってダメなら、医学と科学の力でどうにかしてもらうから」

素直に笑って答えた。