乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

正々堂々戦った勇者を称えて拍手を送るみたいな。真なんて紗江に褒められたことないのに、親友お墨付きの男に惚れられて、女冥利に尽きるしかないじゃない。胸の真ん中がきゅっと鳴いた。

「連絡は取ってるんでしょ?体は?平気?」

「毎日じゃないけどねぇ、着信入れとくと電話はくれるよ。今は知り合いの部屋に居候してるから、なんかあったらその人からも連絡あるし、本人は『心配ねぇよ』ってそればっかり!週明けに検査が始まって、治療方法はそれから決まるんだけどねー」

ストレートの髪を耳にかける仕草で、サラダをつつきながら気遣いを滲ませた彼女に、明るく答える。

「ちゃんとした病院で、ちゃんとしたセンセイに診てもらえるらしいし、こっちとは大違い。悪いとこ全部治してもらって、殺しても死なないくらい頑丈になってくんないとっ。もし無理して戻ってきてもコンテナに詰めて即、送り返すもん!」

「で、心配性な誰かさんも一緒にコンテナに詰められるのよねー?」

可笑しそうに紗江が笑った。

「シンガポールのお土産は宮子の新婚旅行のと、まとめてでいいって榊クンに言っといて」

「紗江の約束やぶったら怖いからねぇ」

笑い返した心の中で、榊にもうひとつ約束を増やす。

ねぇ忘れないでよ?
約束がたまってるんだからね、
ぜんぶ果たすまで生きてるって、
約束してよね。