乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

「な。・・・んで、いんの?!」

「・・・・・・眠気覚ましに歩ってたらお前がいただけだ」

「てか!盗み聞きしたでしょ、バカ」

立ち上がると、照れ隠しでじっとり上目遣いに榊を()めつけた。

顔色も悪くない。クマもない。声。眼。いつもの榊。よし合格!

「気付かねぇほうが悪いんじゃねぇのか・・・」

鬱陶しさ全開でつぶやいたのを、あんまり普段と変わらなさすぎて小さく吹き出す。

仏頂面した榊にあたしは、心底安心したんだと思う。ひとしきり笑うと肩で大きく息を吐いた。

「神頼みなんかしなくたって平気そうで、よかったじゃない?」

「余計な心配してねぇでお前はお前のやることやれ。・・・俺のことはテメェでどうにかするって言ったろうが」

「わかってる」

「それと真に根詰めさせすぎんな。ほっとくと事務所に引きこもって出てこねぇぞ」

「ん。気を付けるね」

「出かけたかったら仁さんか葛西さんに頼め。近くだろうと、ひとりでウロウロすんじゃねぇよ」

「大丈夫だってば!」

「・・・お前を残してく俺の身になりやがれ」

真っ直ぐ。榊があたしを見てる。眸の奥が微かに揺れてる。さっきからあたしと真の心配ばっかり。ほんとに、どうして、あんたって男は。

「榊こそ、もっと自分のことだけ考えてよ・・・っ」