乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~

真とふたりで亞莉栖にも顔出したみたいだけど、あたしは行けなかったし、榊とはろくに顔も合わせないまま今日になった。

サンダルの足音と鳥のさえずりをお供に、湿った匂いに包まれた小道を歩く。うちの敷地は半分くらいが竹林と雑木林で、ここは真夏でも塀の外よりひんやりする。

母屋の手前で、昔から残ってる土蔵の脇をそのまま入ってく。

裏に小っちゃい祠があって、子供の頃はおばあちゃんに言われてよく手を合わせてた。なんの神様が祀られてるかは分かんない。でもたまにこうして神頼みに来たりする。

かがんで見ると塩が供えられた皿も徳利も、真新しかった。もしかしたら、早起きなおばあちゃんが同じお願いごとをした後かもしれない。

「どうか榊が200年は長生きできるくらい、元気になって戻ってきますようにっ」

八百万の神様。榊は真っ当なのに、あたしが極道に道連れにしたんです、なにも悪くないんです。罰ならあたしが全部引き受けます、だからどうか助けてください・・・!

「・・・そんなに長生きさせんじゃねぇよ」

頭の上からボソッと聞こえて、首がねじ切れそうに思いっきり振り返る。

こんな朝っぱらに黒スーツ着た不愛想な男が後ろに突っ立ってるんだから、変な声と一緒に心臓が飛び出るとこだった。