雨声~形のないラブレター



「おはよ」
「おはようございます」

10時にストリートピアノの前で待ち合わせなのに、9時半に着いたら、既に彼がいた。

「何時からいるんですか?」
「さぁ、何時からだろう?」
「へ?」

クスクスっと笑った彼は、スマホをポケットにしまって、その手を私へと差し出して来た。

「汗ばむけど、手、繋いでいい?」
「っっ……はい」

美しい音色を奏でる指。
意外としっかりしていて、筋肉質だ。
それに凄く長い。

「少しぶらぶらして、お昼ちょっと前になったらよさそうなお店に入ろうか」
「はい」

1年前はホームからカフェ。
カフェから自宅くらいしか彼と歩けなかったけれど。

今は手を繋いで、同じ歩調で歩いている。
真夏の太陽が降り注ぐ中―――。



城跡をゆっくりと散策しながら、彼と会話する。

彼が通う男子校は、かなり有名な進学校らしい。
1年近く休学したこともあって、1学年下の男子とはちょっと温度差があるらしい。
それでも、仲のいい友人ができたと話してくれた。

「昨日話した、『話しておきたいこと』なんだけど」
「……はい」
「紫陽花ちゃん、福祉系の大学に進学希望だって言ったよね?」
「……はい」
「俺、こっちの大学に進学することにしたから」
「……え?」
「びっくりした?」
「……はい。……えっ、えぇぇぇっ?!!!」