手を繋いで、君と前を向く。

「ちがっ……会いたくないんじゃなくてっ。わたし、今吐いてばっかりで体力も落ちてて。ひどい顔してるから。恥ずかしくて情けなくて……九条くんにこんな姿見られたくなかっただけなの。いつも来てくれてたのに、本当にごめんなさい」

「いや、俺の方こそごめん。謝らせたいわけじゃなくて。潮路がそうやって思ってるのわかってたから、気にしなくていいって言いたかったんだよ。言葉たらずでごめん」

「……」

「それに、ひどい顔じゃなくて頑張ってる顔だろ。潮路は今、必死で病気と闘ってるんだ。それのどこが引くんだよ。かっけーじゃん」

「……っ」

「そもそも、潮路だって最初に俺のこと見ても噂知ってても何も言わなかっただろ。それと一緒だよ」

「……ありがとう九条くん」


どこまでも優しい九条くんは、ボロボロのわたしを見ても引くこともなく、いつも通りに接してくれた。

かっこいいなんて、言ってもらえると思ってなかった。


"必死で病気と闘っている"

"頑張ってる顔"


そんな風に言ってもらえると思ってなかったから、涙を堪えるのに必死だ。

そうだよね。九条くんが明るい茶色の髪をしていても、ケンカをたくさんしているような不良でも、実は九条くんの自身はすごく優しいのを知っている。

それと同じで、九条くんもわたし自身を見てくれてるんだよね。

嬉しい。嬉しいよ九条くん。

何度お礼を言っても足りないくらいに、嬉しい。


「つーか、俺がここに来るのは母親の見舞いのついでなんだから」


付け加えるようにそう言った九条くんは、どこか照れたように見える。

そんな表情とわかりきった優しいウソに、また胸がいっぱいになるのだ。