手を繋いで、君と前を向く。

その日から、一日に何度かメッセージのやり取りをするようになった。

今日のご飯の話とか学校の話とか、なんてことない普通の会話。

まるで学校の教室で友達と喋っているような感覚になれて、吐き気でつらい気持ちが楽になる。


"今日も吐いてるのか?"

"うん。ちょっとしんどい"

"無理しないで寝れそうなら寝ていいから"

"ありがとう"


毎日そんなやりとりもあって、九条くんへの気持ちは増す一方。

あぁ、好きだなあ。そう思う。

それと同時に、


「会いたいなあ……」


とも思う。

そういう時は決まってお守りをぎゅっと握って、お願いするんだ。


「……早く病気が治りますように」


一日でも早く。元気になりたい。

そして、元気になったらこの気持ちを伝えるんだ。




──だけど、現実はそんなに甘くなかった。


「……困ったなあ……」


お医者さんがデータを見ながら呟く姿を、もう何回見ただろう。

毎日決まった時間点滴していた抗がん剤。

それが、効いていない。

吐き気で喉は焼けるように痛くて、体力も削られていく。栄養もとれず身体はガリガリ。髪の毛も抜けてしまったし、お肌も爪もボロボロだ。


一週間我慢すれば。

二週間我慢すれば。

一ヶ月我慢すれば。


そうすれば、何かしらの結果がついてくると思っていた。

少しでも数値が良くなっているって言ってもらえると思っていたのに。

お医者さんに告げられたのは、


「移植手術をしましょう」


そんな言葉だった。